ラスト・プレリュード ~運命の黄昏 忘れられし物語~

プロローグ 神々の黄昏し刻のはじまりの刻

 武神精霊ヴェルトサートと呼ばれる存在が没したとされるこの地において、 生命の営みは依然として変わらず存続していた。

 その生命の営みというのは厄介なもので、時には略奪、時には堕落、 そして、時には他の生命を奪うなどということが行われることもある。 しかし、それもまた生命の営みである証に他ならない、さる精霊はそんなことを言っていたらしい。
 そんな精霊によって管理の行き届いているらしいこの世界”エムレシア”―― 今日もまた、いくつかの生命が奪われ続けていた。

「さて、見ての通りだが、手配書のほうにまたしても新たな連中が加わった。 また、言うまでもないがこの受付でも討伐案件の話題は尽きない状態が続いている。 だから、まあ、そのー、なんだ――苦しい状態が続くかもしれないが、 くれぐれも無理はしないでくれ、ということだ」
 トライトの町、ハンターズ・ギルドというところではそのような話題でもちきりだった。
「賊も魔物も尽きないな」
 一人のハンターはハンターの受付に対してそういった。
「ああ、そうそう、大事なことを忘れていた。 例の”七魔性聖”なんだが、ようやく”陽炎のクオラール”の面が割れたぞ!  あと、最近の出没ポイントもある程度判明しているぞ!」
 なんだって!? その話題にはハンターズギルド中にいるハンター全員が食いついた。

 そもそも、”七魔性聖”というのが何なのかから話さないといけない。
 ”七魔性聖”というのは、このエムレシアに突如として現れ、 この世界を貶めんとする存在の総称で、文字通りかつては7人存在していたが、 最初の時期から6人増えて4人倒されているため、存命なのが9人も存在している、さしづめ”九魔性聖”である。 世界を貶めんという類の輩自体はこの世界にある程度いるのだが、 この”七魔性聖”というのはそんな小悪党なんかよりもよっぽど驚異的な存在で、 そんじょそこいらの使い手の腕では歯が立たない連中ばかりなのである。
 たとえば、”七魔性聖”と言われて最初に撃破された”暗黒のザール”ってやつがいるのだけれども、 あれ1人を倒すだけでもかなり手こずった。 それもそのはず、あいつを倒したときは、作戦に参加したハンター総出で、 その後といえば、1つの村落が消滅してしまった。
 そして、此度は2人目の撃破対象となる”七魔性聖”の”陽炎のクオラール”、 いよいよ正体を現したようだが、果たして勝てるのだろうか?

 ところが、彼らは現地に駆け付けると、無駄足もいいところだった。 流石にこの手の話題が大体出るときは、決まって作戦に参加しているハンターはすでに何人かいて、 ある程度は話が終わっていることだろう。 これは”七魔性聖”に限った話ではなく、そこいらで指名手配されている有名な悪党だったらあり得る話である。 そもそも、”暗黒のザール”ってやつがそうで、 ほかのギルドの連中を待たずしてトライトのハンターたちが片付けたんだから――まあ、基本的には、 討伐は早い者勝ち、当然、分け前も早いもの勝ちなのである。 あれだけの大物をハントしたとなればなおさらだ。
 というわけで、残念ながら此度の”陽炎のクオラール”、 トライトの連中は他の連中に先を越されてしまったようである。

 とはいえ、悔しがっている暇などはなかった。 討伐対象は大勢いて、ターゲットの大小はともかく、 それこそ、あの”七魔性聖”の名を語ろうとする輩まで現れ始める始末、世も末である。
 そんな中、ある一人のハンターは討伐対象を入念にチェックし、 コンビを組む必要があるのであれば前もって相手と取り決めを行い、 そして、討伐対象を1体ずつ丁寧に倒していくことを考えていた。
「それにしても――仕事はあるに越したことはないが、 最近、敵の傾向もだいたい決まってきているような気がするな」
「傾向?」
 そのハンターは話しかけられると、そう返した。言われてみれば確かにそう思った。 一例として、魔物が多いか賊が多いかという傾向もあるのだけれども、 今回は手配書の内容から魔物が多いように見えた。
「しかもその魔物の目的自身もはっきりしているようにも見える」
 魔物は魔物らしく生命を奪うことこそが目的? かと思えば、それは違いそうだった。 そもそも魔物にしては知恵が回るようなこの度の案件、詳しい話は――

 ともかく、魔物の目的を考えるに一つの考えが浮上した、それは――
「魔性の力を振りかざし、魔物の理性をくすぐって、何かと世間を騒がせているようだが、もはやこれまでのようだな」
「なっ、なんだキサマはっ!」
 そのハンターをはじめ、トライトの何人かのハンターはさっそく行動に出たのである。 ハンティングの対象は魔物を完全に操っているわけではなく、 ちょっとした細工をして魔物に特定の行動をさせるように仕向ける―― そう、そういうやつが”七魔性聖”気取りの小悪党の例である。
 その小悪党は、とある商会の幹部とつながりのあるやつだった、所謂悪徳商会という組織である。
「ネタは割れているんだ、観念しろ。これでお前らも終わりだな」
 魔物は商会の荷馬車を襲うやつだった。荷馬車には当然商品などが積まれているのである。 巧妙なのはライバルだけでなく、自分のところの荷馬車まで襲わせているところであるが、 一見、自分の商会の荷馬車を襲うだなんておかしいと思うかもしれない。
 しかしその実、本当に襲わせたい荷馬車はライバルのものではなく、 自分の荷馬車がメインで、それにはとある理由があったのだ。
「荷馬車と積み荷に多額の保険をかけて堂々と襲わせるとは盗人猛々しいにもほどがあるな」
 ハンターは抵抗するそいつを何とか取り押さえ、そして警察に突き出した。 当然ハンターだけでなく、警察組織というのもこの世界には存在する、主に犯罪者の取り締まりが仕事だな。 一方で彼らハンターは仕事は何でも引き受ける、警察組織とは相容れないところがなくはないが。 とはいえ、世の中持ちつ持たれつでやっているため、各々の目的のために協力だって惜しまないのである。

 話は長くなってしまったが、 この世界でもいろいろな面倒を背負って生きていくことになっているということである。 特に、全部で13人いた”七魔性聖”のうち、6人撃破されたのだが、 もう7人……つまりは文字通りの”七魔性聖”を倒さなければならないというミッションも残っているし、 仕事もターゲットの討伐だけとは限らない。
 そしてこの3年後、ライズというハンターはさらにまた大変なミッションが与えられることになろうとは、 その時はまだ知る由もなかった。

ラスト・プレリュード ~運命の黄昏 忘れられし物語~
 Last Prelude -Dawn of Fate Var. Forgotten Epilogue-