運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第2章 オンナの星

第33節 まさかの出来事

 あまりに無茶な行動――本来であれば重大な問題となるべきところだが、 今回は流石にお咎めなしということになった。
 各クルーは防護服で身を包むと艦内中を消毒清掃していた。
 一方、フローナルはクリーンルームで身体洗浄を終えると、 そのままカルディアスの個室へとやってきた。 彼ももちろん身体洗浄を実施した後である。
「さっきは悪かったな――」
「いや、まさかあんなことになるとは思ってもみなかった、むしろ命拾いしたよ――」
 カルディアスは頷いた。
「それで……何があったんだ?」
 フローナルは惑星UNP00002で起きたことを話した。
「”ダーク・マター”だって!?  そんなものが本当に存在していたとでも言うのか!?」
 フローナルは頷いた。
「存在していたかどうかはそんなに問題じゃない、問題はあの場で何が起きたかだ。 そもそもあの場であれを発動させたやつがいる、恐らく、遠隔操作かなんかだろうが…… それでも、あんな事態を引き起こすほどの物体がきちんと設置されているというのはどう考えてもおかしい――」
 確かに……カルディアスは悩んでいた。
「世界は滅びる、もはや一刻の猶予もないという感じだな……」

 あの星で起きたことはもはや追跡不可能、諦めるしかなかった。 あれだけの事態を引き起こすには相当の力をぶつけなければいけない、 そうなるとやたらめったら起こり得ることではない……のだが、 それがもし、数年後に引き起こされるんじゃないかと思うと――なんともぞっとする話である。
 そして……今回の目的であるランドグリスへとやってくることとなった。
「ランドグリスの周回軌道は複雑……だけど、このあたりの宙域を漂っていることは確実みたいね――」
 フィレイナはそう言った、ランドグリスは不規則な動きをしている惑星だったが、 それでも常にそのパターンを保って動いていることは今回の調べでわかった。
「不規則に漂っているだけの星というのもなんだか妙な感じですね、まるでその場所に何かがあるみたい――」
 ディルナはそう言うとカルディアスは頷いた。
「確かにそういう感じがするな。 ただ、一体何があるというんだろうか……」
「フィレイナ、何かあるのか?」
 フローナルは訊くと――
「さあ? 私が行った時は特に何もなかったような気がするけど――」
 と、フィレイナは答えた。

 そして……ワープ先の周辺宙域へといよいよ到着しようとしていた。
「そういえば、あんたたちがこのあたりの宙域に来たのって初めてだっけ?」
 フィレイナは今更ながら訊くとカルディアスは答えた。
「そもそも惑星UNP00002やエリュカリス付近まで来たのも初めてだ」
 あっ……フィレイナは悪びれた様子で言った。
「そっ、それは御免なさいね、フェルドゥーナの民自ら新たな一歩を踏み出す―― その行為を踏みにじってしまったみたいで――」
 だが――カルディアスは答えた。
「いいんだ、メテオ・ナイツのクルーであれば誰がそれをやっても同じこと。 それに――今回は急を要する事態、 私としてもあなたに船のオペレーションを預けたのは最善の策と判断したまで、 第一、キミは元をただせば同郷の者だろう?  だったら、我々は既にこの領域まで到達しているようなもの――私はそのように理解しているし、 それに……どの星の者が踏破したとて同じことだ」
 そういうふうに考えてくれるのか……フィレイナは考えた。
「ははっ、まあ――郷には郷に従え――その場所には最も相応しい方法で…… つまり案内してもらうつもりでいるのが一番簡単な方法というのが実際のところだけどね」
 と、カルディアスは付け加えると、フィレイナは――
「いいわね、それは私も同じ考えよ。 やるからには最善の方法で――それに対して最もベストな方法でいくって言うのがやっぱり一番に決まってるからね!」
 なるほど、常にベストな手段でか――カルディアスは考えた、まさにシルグランディアだな……。
「ああそうそう、それならこのあたりの宙域のデータを更新しておかないといけないわね。 見たところ――トラジアータからもらったデータなのかしら、それぐらいまでしかもってないみたいだから――」
 カルディアスは頷いた。
「それは助かる、予め地図があるというのであればこちらとしても願ったりだ。 それで……やはりランドグリスよりも先のデータもあるのか?」
「ええ、もちろんよ!  ランドグリスを見つけた先の宙域には”アドカリアス宙域”というのがあってね、 それはそれは本当に美しい星々が広がっているような領域なのよ。 ま、言ってもほとんどが恒星、着陸すること自体が困難な星もあるんだけどね――」
 と言っていると、ようやくワープ先に到着したようだ。
「ついたようだな、さてと……まずはランドグリスの捜索からだな――」
 カルディアスはそう言うと、ディルナは訊いた。
「あの、お姉様! その”アドカリアス宙域”って何処にあるんですか?」
 フィレイナは得意げに答えた。
「ええ、すぐそこに見えているはずよ。 とにかく、文字通りキラキラと輝く星々たちが――」
 とはいうが、ディルナを初め、何名かのクルーたちは首をかしげていた。
「えっ、どれがそうですか?」
 ディルナはじっと探していた、どうやら見つけられないようだ。
「えっ? ああそっか、もしかしたら位置がずれているかもしれないわね、 私が44年前にランドグリスを発見した位置とは違うところに出ているはずだから、えっと――」
 と、フィレイナは艦の展望カメラを操作して探していた。
「ん? んん!?」
 カメラをさらに捜査して探していた。
「あれ、おかしいわね、どこかしら?」
 すると――
「あ! あの星は!?」
 と、モニタに入ってきた惑星をディルナが指摘した。 なんだか赤々と不気味に輝く星、大気はどうやらなさそうに見えるが――
「ええ、あれがランドグリスよ、それは間違いないわね。 けど……おかしいわね、アドカリアスは何処に行ったのかしら?  それに……この場所だと、さらに隣の”クバーネス宙域”が見えてもおかしくはないんだけど――」
 と、フィレイナは首をかしげていた。
「な、何も見えないようだが? 場所が違うのか?」
 カルディアスは訊いた。
「いえ、この座標からすると間違いなく両宙域の星々が見えるはずなのよ、 だから――おかしいわね……」
 すると、フローナルが――
「なあ、エターニスの精霊の感覚で話をしてもいいだろうか?」
 カルディアスは頷いた。
「どうした? 遠慮はしなくていいぞ?」
 フローナルは頷いた。
「そうか、それなら……。 このあたりの宙域だが、生命がいるような感じが…… それこそ自然界を構成する”マナ”ってやつの気配を微塵も感じないんだが――」
 なんだって!?